聞こえてきたのは、不安に押し潰されそうなきーくんの声で。

「……今一瞬ひなが……つ、ひなが俺の前から消えてしまったのかと……っ」

 私は突然のきーくんの行動の意味を理解した。

 私がいなくなることを、きーくんはすごく恐れているのだ。

 私は手を伸ばしてきーくんの広い背中に手を回す。

「私はここにいるし、どこにもいかないよ?」

 私はきーくんの不安が消えますように、と祈りながら背中をぽんぽんと叩く。

 すると、私を抱き締めていた腕の力がだんだん緩んでいく。

「……うん。そうだね。ひなはここにいるよね」

 きーくんは私から身体を離すと、今度は私の手を取った。

「ひながどこにいても絶対俺が見つけるから、このブレスレットを離さずに持っていて欲しい」

 そして私の手を自分の頬に添えたかと思うと、今度は私の手のひらにそっと唇を落とした。

「ふ、ふえぇえええ〜〜〜〜っ!!」

 ──手のひらへのキスは、”懇願”。

 まるで王子様のようなきーくんの行動に、私の心臓はもう限界だ。

 あまりのことに、私は腰を抜かしそうになる。