「悪かったって。もうしないから、その殺気引っ込めてくれない? ひなちゃん怯えてるよ?」

「あっ……!」

 宇賀神さんに指摘されたきーくんが我に帰ると同時に、突き刺さるような殺気がフッと消える。

「ひなごめん! 怖がらせて!!」

「……あ、えっと……っ、ちょっと驚いたけど大丈夫だよっ」

 私はきーくんににこりと微笑んでみせた。

「ひな……」

「じゃあ、お邪魔虫の俺は退散するね! ひなちゃんバイバイ!」

 きーくんが私のことに気を取られている隙に、宇賀神さんはさっと姿を消してしまった。

「……ちっ、暁の奴……っ!」

「きーくん、怒らないで? 私宇賀神さんに何回も助けてもらってるし……。総長の跡目のことだって、断るつもりだったし」

 私はきーくんを落ち着かせようと、ぽんぽんと背中を優しく叩いた。

 昔は頭をよくぽんぽんしていたけど、今はもう身長差で手が届かない。

「うん……。ひながそう言うなら……」

 ぽんぽんが功をなしたのか、きーくんが落ち着いてくれてホッとする。

「ほら、今日は手料理を食べさせてくれるんでしょ? 早く買い物に行こっ」