中三の頃、私は偶然きーくんが告白されている場面に出くわしてしまった。
きーくんに告白していたのはすごく可愛い子で。
クラスの男子も可愛いと良く噂している女の子だった。
そんな人気の女の子からの告白も、きーくんは眼中にないようであっさり断っていた。
「鬼月くんには好きな子がいるの? いるなら教えて! 私その子に負けないぐらい頑張るから!」
断られた女の子はそれでも諦められないようで、ぐいぐいきーくんに迫っている。
「君がいくら頑張ってもその人の代わりにはならないよ。それに俺はずっと昔からその人しか見てないから」
そう言うきーくんはすごく遠い目をしていて──どこか遥か遠くを見ているようだった。
そんなきーくんを見て、きーくんがそこまで想うその人は、絶対に私じゃないことを、嫌でも理解してしまう。
私は二人に気付かれないようにその場を離れると、猛ダッシュで家に帰って、速攻ベッドの中で泣いた。
きーくんは私をすごく大事にしてくれていたから、きーくんも私を好きでいてくれるのだと、ずっと誤解していた。
私はずっときーくんと両思いだと勘違いしたと知って、それがすごく恥ずかしかった。
恥ずかしくて悲しくて、この世界から消えてなくなりたいと思うほどに。
しばらく落ち込んだものの、きーくんの前では無理やりいつも通りに振る舞っていた。
だけどそんな私に勘が鋭いきーくんが気付かない訳なくて、色々心配をかけたけれど、理由だけは絶対に言わなかった。
それからの私は、必死にきーくんを諦めようと努力した。
だけどきーくんは相変わらず私に甘く、優しくて。
──どうして好きな人がいるのに、私に構うんだろう? どうして私を大事に扱うんだろう?
──こんなの、諦められる訳ないじゃない。