「せやな。流血沙汰は勘弁して欲しいわな。平和が一番やで〜」

 ”鬼神”の総長である"宇賀神 暁(うがじん あきら)"さんは人望も厚く、みんなが憧れる存在だ。
 だけどそんな宇賀神さんが認める、唯一の存在を私はよく知っている。彼が指名した人なら、”鬼神”のメンバーは誰も反対しないと思う。

 だから、本当に宇賀神さんが”鬼神”の総長を引退すれば、次期総長は必然的に──

「ほらほら、暴走族の話はもうやめて歌おうよ! あ、楓怜リモコン取ってー!」

 優希ちゃんの声で、考え事をしていた私の意識が引き戻された。

 まあ、私がいくら考えても仕方がない。
 暴走族の継承問題なんて、私にはまったく関係ない話なのだから。

 ──なんて思っていた時期が私にもありました。

 この時はまさか私がこの継承問題の中心になるだなんて、夢にも思わなかったのだ。