上杉さんを好きになってしまったものの、心の何処かでは、最初から諦めもあったように思う。
 他の司書の女性たちも、上杉さんに憧れていることに気付いていたから。

 職場も職場なので、キャーキャー言うことはなくても、上杉さんと話すとき、彼女たちの態度が変わっていることを見抜ける程度には、私も大人だ。

 しかし、大人の女性たちでさえ、上杉さんにはただ憧れている程度だとしたら、上杉さんには既に、特定の恋人が居るのかもしれない。
 薬指に指輪がないので、独身だとは思ったが。

 これまで、同年代の男の子に興味を持ったことは一度もなく、告白されても、断るしかなかった。
 きっと、私は潜在的に年上がタイプだったのだろう。

 上杉さんへの想いは日ごと募るばかり。
 図書館で、ほんの少し言葉を交わすだけでは、ついに我慢できなくなった私は、玉砕覚悟で、告白することに決めた。