それなのに、やはり何かが違う気がしている。
「ううん、今日は遠くまで本当にありがとう。上杉さん、明日も仕事なのに」
「構わないよ。いい気分転換になったから」
 結局、ハザードランプに追い立てられるよう、私はシートベルトを外した。

「瑤ちゃん」
 大好きな声に振り向くと、頭をポンポンと撫でられた。
「おやすみ」
 笑顔で言われ、
「おやすみなさい」
 私も無理をして微笑んで答えた。

 車を降りると、私は振り返らずにマンションのエントランスのロックを解除する。
 去ってゆく車を見るのが切なすぎるから。

 部屋に戻り、シャワーを浴びながら、鏡の向こうの自分を見つめて思う。
 そこに映っているのは、大人の女性には程遠く、単なる少女でしかない。
 来年には、ハタチになるのに。
 女の子扱いならば、されている。充分なほどに。