〇教室、HR

 歓声に包まれる教室内。

クラスメイトA「めっちゃ美人じゃん!」
クラスメイトB「背、高くない!?」

咲奈(綺麗な黒髪、美人、完璧なスタイル。何より——)
咲奈モノ『キラキラしてる……!』

 姿勢よく教壇に立ち、真っ直ぐ前を見る悠月。

悠月「藤堂悠月です。よろしくお願いします」

 名前を黒板に書く悠月。

咲奈(字もめっちゃ綺麗……)
 瞳を輝かせる咲奈。

担任「席はー、そこの星川の隣だ」
悠月「はい」

咲奈(え!?となり!?ど、どうしよ……)

 心臓を高鳴らせる咲奈。にこりともせず席に向かう悠月。

咲奈「よ、よろしくねっ!」

 悠月は真顔のまま咲奈の方を見て、軽く会釈すると視線を逸らす。

咲奈モノ『き、嫌われてない、よね?』

〇教室、HR後

 悠月の周りに群がるクラスメイトたち

クラスメイトA「どこの高校から来たの!?」
クラスメイトB「付き合ってる人とかっている?いないなら立候補しちゃおうかなー」
悠月「……」

 悠月はクラスメイトの問いかけに答えず、淡々と授業の準備をしている

クラスメイトC「ねえねえ、もしかしなくてもLILYの読モだよね!?」

 クラスメイトCがスマートフォンをみんなに見せる。画面にはSNSのプロフィール。アカウント名はYuzuki、アイコンには顔に手を添えた悠月の写真。

 大きな声に、クラス中が一斉に悠月に注目する。

悠月「……そうだけど」

 一斉に湧き上がる教室内。

咲奈(わぁー!)
咲奈モノ『藤堂さん、めっちゃキラキラしてる……!』

美鈴「とんでもない人が来ちゃったね~」
柚「咲奈どうしたー?」

 悠月に目を奪われる咲奈に声を掛ける友人たち。

咲奈「キラキラしてる……!」
花火「いやキラキラって……」
優海「確かに美人だけど……」

 悠月の周りにいるクラスメイトたちの隙間から、悠月の顔がカメラ目線に。

咲奈(今……)
咲奈モノ『目が合った——?』

○教室、放課後

 変わらず悠月の周りに群がるクラスメイトたち。噂を聞いた他クラスからも人がやって来る。
 
 悠月に話しかける男女グループ。*賑やかなグループ。大地、陽向、泉水、莉佳の4人

大地「これからみんなで遊びに行くんだけど、一緒に行かね?」
泉水「行こ行こ、藤堂さん!」
陽向「行きたい所とかあるか?」
莉佳「てか連絡先交換しよ」

 悠月はそれを完全に無視して帰り支度をしている。
 その様子を遠巻きに見る咲奈。そこに友人たちがやって来る。

美鈴「ねぇ、これから新作飲みに行かない?」
柚「あ、行くー!」
花火「私も飲みたかったんだよね~」

咲奈(今日はちょっと……)
 顔を曇らせる咲奈。

優海「咲奈?」
咲奈「ううん、なんでもない。行く行く!」

咲奈(でも盛り下げたくないし、仕方ないよね)

 友人たちに続いて教室を出る咲奈。
 その様子を無言で見つめる悠月。

○咲奈の家、リビング、夜

 咲奈・母が夕食の準備をしている。*ミディアムヘアの髪を後ろで一纏めにしている
 リビングのTVからは夕方のニュースが流れている。

咲奈「ただいまー」
咲奈(やばいやばい……)

 咲奈は制服のままリビングのソファに座る。咲奈がチャンネルを変えると、ちょうどドラマが始まる。
 画面いっぱいに映るのは女優の桜井アリサ。*長い髪を巻いてツインテール、アイドルの可愛い衣装を着てステージで踊っている

咲奈「今日もかわいい~!人気アイドル役ピッタリすぎ!!」
咲奈・母「咲奈は本当にその子が好きねぇ」

 ご飯を茶碗に盛りながら咲奈・母が言う。

咲奈「めっちゃ可愛いもん!」

咲奈モノ『今絶賛話題の女優、桜井アリサ。モデル出身で、今はドラマだけでなく映画や舞台にも多く出演している。私が目指す、キラキラした人ナンバーワン!』

(回想)
 ランウェイを歩くアリサ。雑誌の表紙を飾るアリサ。舞台の中央で女神の演技をするアリサ。ドラマで若い女刑事役を演じるアリサ。
(回想終了)

咲奈(アリサちゃんみたいなキラキラした子になりたい……)
 ドラマを見ながら考え事をする咲奈。
咲奈(でも……)
咲奈モノ『似合うメイクとか分からないし……』

 (回想)メイクを失敗してしまう咲奈。
咲奈モノ『可愛い髪型も難しい……』

 (回想)動画を見ながらコテで髪を巻くも、変な方向に巻いてしまう咲奈。
咲奈モノ『どうしたら……』

 悩む咲奈の瞳と重めの前髪アップ。

咲奈(……あっ!)

(回想)悠月の顔、悠月の髪*キラキラした感じ

咲奈モノ『あの子が何かヒントになるかも……!』

○朝、教室

咲奈モノ『藤堂さんが転校してきて一週間』

 友人たちの話に相づちを打ちながら、隣の席から悠月をこっそりと見る咲奈。
 悠月は1人、席についてスマホを見ている。転校初日に悠月を取り囲んでいた人は誰もいない。

女子A「……なんか、藤堂さんって思ったより大したことないよね」
女子B「だよねー。もっと性格良いと思ってた」
男子A「愛想がないよなー」
男子B「フツーに残念」

 ヒソヒソと陰口を叩く生徒たち。彼らに批判的な視線を向ける咲奈。心配そうに見つめる咲奈の友人たち。

泉水「ちょっとあんたたち、そういうこと言うのやめなよ」
大地「そうだぞ。せめて場所は考えろよ」
女子A「は、なんなの?」
男子A「だるいって」

対立し合う泉水たち男女グループと陰口を叩く生徒たち
 悠月は表情を一切変えず、スマホを操作している。

莉佳「まーまーまー、泉水落ち着いて」
陽向「言っても仕方ないって。藤堂もゴメンな?」

悠月は立ち上がり、クラスメイトを一瞥する。

悠月「そういうのいいから」

静まり返る教室。

咲奈モノ『藤堂さんは孤立していた——』