「うん。だから父さんたちは、お祖母様のためにその根源を失くしたんだ。代償も大きかったけど、悔いはないって」
「でもその代わり、マニフィカ公爵様の遺言に従う者は誰もいなかったの」
「当然です。むしろ、恨んでいたと思います。私を捨てた、奥方様と同じように」

 私は婚約者という立場だったけれど、ユベールのお祖母様は違う。
 力のある魔術師としての誇りを胸にして嫁いで来たはずだ。それなのに、待っていたのは、形ばかりに妻。後継者を生むだけの存在。

 もしかしたら、私以上に辛い思いをされたことだろう。今の私が人間の姿をしていたらきっと、泣いていたかもしれない。
 あの頃とはもう違うから、きっと。

「リゼット、ありがとう。父さんやお祖母様の気持ちに寄り添ってくれて」
「お礼を言わないでください」
「それでも、その涙は父さんたちのためのものだろう?」
「なみ、だ?」

 今の私は人形なのに?

 私は瞼を閉じ、目元に手を伸ばした。が、触れようとした瞬間、頬を温かいものが流れた。