話を聞けば聞くほど、ヴィクトル様の手紙の内容に真実味が増してくる。
 本当に私はヴィクトル様に愛されていた。私もまた……。けれどもう、ヴィクトル様はいない。

「リゼット?」

 俯く私を心配したのか、ユベールの手が緩む。と同時に、声をかけられた。とても優しい声音で。
 けれど私にはそれを受ける資格はない。

 ユベールのお父様、並びにご兄弟に多大な迷惑をかけたというのに。お祖母様に至っては、言葉では言い尽くせない程。

「確かに没落した原因はリゼットにあったんだと思う。でも、お祖父様が家を取り仕切らなくても、お祖母様や父さんたちだけでやっていけたんだ。だけど……」
「分かります。私も役立たずだと言われていた身ですから、お祖母様の心労がどれほどのものだったか」

 婚約破棄をされて、やっぱり、と思っても辛かった。
 使用人たちの戯言だと、気丈に振る舞っていても、事実を突きつけられた瞬間、呆気なく決壊してしまったからだ。必死に作った心の防波堤が、感情の波に押しつぶされて、制御できなくなっていた。

 恐らく、使用人たちはきっと、私にしていたように、ユベールのお祖母様にも同じことをしていたのだろう。新たな獲物が、もしくは邪魔者が来たと思ったに違いない。

 人の感情はすぐに変わるものではないから。私がまだ、ヴィクトル様を想っているように。