「マニフィカ公爵様は英雄になった後も、度重なる遠征に向かっていたの。始めはリゼットも連れて行っていたのだけれど、部下の一人が不快に感じたのね。リゼットを粗雑に扱ったらしいのよ。それに激怒したマニフィカ公爵様は、それ以後、リゼットを遠征に連れて行くことはなくなったと聞いているわ」
「そしてお祖母様が、遠征でお祖父様が家を留守にしている間にリゼットを捨てたんだ」
「そうすれば、マニフィカ公爵様が自分を見てくれると信じたのでしょうね。自分だけでなく、子どもたちも含めて」
「だけど、お祖母様の望みは叶えられなかった。お祖父様はその日を堺に、リゼットを探し始めて、英雄の努めさえも放棄。勿論、仕事さえも」
「ヴィクトル様が?」

 サビーナ先生とユベールが交互に語っていく中、私は胸が締めつけられるほど、悲しくて、切なくて、どうしようもない気持ちになった。
 その片隅に嬉しさを置いてはいけないのに、無情にも喜んでしまう自分もまた存在する。

 ヴィクトル様に、それほどまでに大事にされていたことを知ってしまったから。