「そんな方が何故、私の魔術の先生になってくれたんですか?」

 永久の時を生きる魔女ならば、気まぐれに誰かを指南することもあるだろう。けれど、当時の私はマニフィカ公爵家に在住していた。
 いくら魔女であるサビーナ先生でも、そんな気安く出入りできる場所ではない場所だった。

「私もあの竜たちには困っていたのよ。魔女だと知られないように、居住地を転々としていたけれど、仲良くしてくれる人たちはいたから。その人たちを守るには、竜たちが邪魔だったの。だから、リゼットの噂を聞いて、貴女ならと期待してしまってね」
「すみません。私はその期待に応えることが――……」
「ストップストップ! リゼットを責めているわけじゃないんだから、謝らないで。それに私もまた、一方的に押し付けていた人間たちと同じ。勝手に期待して勝手に――……」
「落胆しましたよね、サビーナ先生も」

 少し寂しかったけれど、目を逸らすサビーナ先生を見て、確信した。ううん。あえて分かり易いように返事をしてくれたのだ。