僕はさらにサビーナさんに近づき、そっと腕の中にいるリゼットを見る。思わず手を伸ばしかけたが、「ユベールくん」と静止された。

「軽く魔力暴走を起こしているから、触れてはダメ。私も抑え込むだけで手一杯だから、ユベールくんまで面倒は見られない」
「サビーナさんでも!?」
「それくらい、リゼットの魔力量は多いのよ。人形になっても変わらずに」

 ということは、それくらいの覚悟を持って、サビーナさんは荒療治を行ったのだ。リゼットを人間に戻すために。
 それなのに僕は目の前のことしか見ていなかった。

「すみません。自分のことばかりで」
「ふふふっ、いいのよ。ユベールくんはまだ十五歳の子どもなんだから。私の助けがあったとはいえ、生活が安定するまで大変だったでしょう」

 十二歳で両親を亡くしてから、サビーナさんの宝石……ではなく魔石を元手に、子どもでもできる仕事を探した。なるべく人と多く関われる仕事を。
 そうすれば、リゼットを探す手がかりにもなるし、伝手(つて)も増える。

 小物や人形の洋服作りも、それが縁でできた仕事だった。