サビーナ・エルランジュさんと出会ったのは、両親のお墓の前だった。

 どんよりとした厚い雲に覆われた空。どこか空気も湿っていて、いつ降り出してもおかしくはない状況だった。
 けれど僕は葬儀が終わっても、そこから離れられず、ただ棒のように一人、立ち尽くしていた。

 さっきまでは、葬儀に参席してくれていた人や、手伝ってくれた人たちがいたが、今はいない。一人ぼっちになってしまった僕の気持ちに、配慮してくれたのだろう。
 慌ただしい葬儀だったから、改めて両親と向き合う時間をくれたのだ。しかしそれを邪魔する者が現れた。

「初めまして、ユベール・マニフィカさん」

 今は誰とも話したくないのに。

 けれどこの人も、両親と親交があった人かもしれない。僕は一歩、後ろに下がり、声のした方へ体を向ける。
 するとそこには、黒いローブにつばの広い三角帽子、といった、まるで魔女のような格好をした女性が立っていた。