それからというものの、私の日課は主にユベールの作業を見守ることだった。
 今の私には自由に身動きができない。ユベールの手を借りなければ、何もできない人形そのものだ。

 人間だった頃は魔術の勉強が日課だったというのに、何という怠けっぷりだろうか。これでいいのか、と悩んでしまうほどに。

 けれど、そんな私にも目標ができた。

「リゼット。そろそろ退屈してきたでしょう。歩く練習をしようか」
「はい!」

 そう、自分の足で歩くことだ。私は慣れた調子でユベールに向かって両手をあげる。それが合図となり、作業台の脇にある棚から、ユベールは私を持ち挙げた。

 さすがに床に置くと、ユベールの腰の負担になるため、歩く練習は専らテーブルで行う。私のせいで姿勢を悪くしてほしくないからだ。

 さらに言うと、私の履いている靴は、床に触れていないため、テーブルの上を歩いていても、平気なのである。
 しかもこの靴は、ユベールの職人気質により、綺麗に磨かれたエナメルシューズ。
 テーブルに立つことを躊躇(ためら)うよりも、むしろその姿を見せてほしいという、ユベールの要望を叶えた形だった。

 けれど、私は優雅に歩くどころか、一歩踏み出すことさえ、困難な姿をユベールに見せていた。