「あぁ、これは仕立て屋さんからの善意。ブディックに出入りしているなら、いい服を着た方がお店のためにも自分のためにも良いからって」
「確かに、と言っても、私はブディックに行ったことがないのでピンときませんが」
「え! そうなの?」
「はい」

 いち伯爵令嬢なのに? と思われるかもしれないが、私の服はマニフィカ公爵家にやってくる仕立て屋さんに作ってもらっていた。
 勿論、費用はマニフィカ公爵家が支払ってくれている。一応、次期公爵夫人だからだ。

「それじゃ、今度行く時には一緒に行こう」
「いいんですか?」
「勿論。リゼットが人形の振りができれば、だけど……できる?」
「はい、できます」

 人形の姿でも、街に行けるのは嬉しい。

「そうなると、リゼットの身嗜(みだしな)みも整えたいんだけど、いいかな?」
「え? でも、服なんて……」
「あるよ。リゼットを探そうと思った、もう一つの理由はこれ」

 ユベールはそう言うと、僅かに空いている作業台の端に、私を座らせた。そして、棚の中からフリルの付いた小さな青いドレスを取り出し、私の目の前に……!