「ごめん! 泣かせるつもりはなかったんだ。ただ確認したくて」

 必死に謝る『ヴィクトル様』の声に、私は両手を離した。直後、自分の手に驚く。

 私の手、こんなに小さかった?

 五本指はあるものの、違和感が先に生じてしまう。まじまじと見つめても、その正体が分からない。
 よく見ると、足もおかしい。

 固まる私を見て、何か察したのか、頭上から『ヴィクトル様』の声が降ってきた。

「あっ、えっと、やっぱり気になる?」
「……はい。上手く言葉にはできない違和感があるんですが、これは何なのでしょうか?」

 見上げながらそう尋ねると、『ヴィクトル様』は困ったような顔をした。

 あっ、これは聞いてはいけなかったこと、だったみたい。

「もし、君に今の状態を受け止められる覚悟があるのなら、教えてあげることができる。でも、そうじゃなかったら……」
「大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます。けれど今は、知らないことよりも知りたいです。貴方のことも……。その……ヴィクトル様ではないんですよね」

 私をリゼットかどうか尋ねるところや、優しさ、気遣いなど、ヴィクトル様との相違点を感じる。間違って怒られても構わない。呆れられてもいい。
 それでも、確認したかった。彼が私に尋ねたように。