「う~ん。どうでしょう。この人形を買い取られますか?」
「っ! あっ、いや、でも……」

 露店の出し物は、この人形しかない。店が潰れてしまうのではないか、と思った少年は否定した。が、男の方はケロリと言い放つ。

「同じ話しかしないんで、もう潮時(しおどき)かと思っていたんです。だから、お客さんが買い取ってくだされば、御の字なんですよ」
「確かに、店としてはやっていけないね」
「でしょう」
「分かった。買い取ることにするよ」
「へへへ。ありがとうございます!」

 少年は男に宝石を渡した。

「あいにく、今はこれしか持っていないんだ」
「十分ですよ、坊っちゃん」

 また男はへらへら笑いながら奥へ、人形の箱を取りに行った。

「ただで貰った人形が、大金に変わるとはな。良い拾い物をしたぜ」

 その声が、まだ店にいる少年に聞こえていることも知らずに。