我が国は、数百年に一度、危機が訪れる。周期的に大移動する、竜たちの通り道になっていることが原因だった。

 静かに通ってくれるのなら、危険ではない。しかし、竜たちは(たわむ)れに建物を壊し、人々を殺していく。力を誇張(こちょう)したいのか、仲間内で競っているのか、理由までは分からない。

 その周期も、定かではないため、毎年五歳を迎えた子供が集められていた。能力の測定をするために。

 騎士に向いている子供。魔術師に向いている子供。学者に至るまで選別され、私は魔術師になるよう定められた。
 理由は測定できないほどの魔力量を保持していたからだという。

 私はすぐに王命でマニフィカ公爵邸へ行き、ヴィクトル様と婚約した。
 マニフィカ公爵家は代々、国の剣であり盾であったがため、適任だと判断されたのだ。私という“武器”を保有するために。

「ゆくゆくは、公爵様と並んでも恥ずかしくない魔術師になることを望まれていたんです。けれど、私はその期待に答えられませんでした」