私はユベールの胸に顔を埋めた。この三年間で、ユベールは随分と背が伸びた。私も伸びたけれど、それもほんの少しだけ。
 私の頭一つ分、差ができてしまったユベールと比べると、ほとんど伸びていない。同い年なのに。

 ちょっと悔しい気分になりながらも、日に日にカッコ良くなっていくユベールを見ているのが好きだった。今のようにそっと私の耳に囁くのもまた。

「それなら昨夜の続きをしようよ。リゼットが望むのなら、何度だって言うから」
「本当?」
「うん。愛しているよ、リゼット」
「私もよ」

 そうしてユベールは私を抱き上げて、寝室に連れて行ってくれた。ユベールが作ってくれたグレーのローブを着たまま。

 今日もサビーナ先生は帰って来ないだろう。言いたいことがあったのに、この至福に私は抗えなかった。
 ユベールの言う通り、ようやく私たちの夢が叶うのだ。そう、家族になる、という夢が。

 リゼット・バルテからエルランジュに、そして晴れて一カ月後。私はリゼット・マニフィカになる。
 百年の時を超えて、ようやく得られた名前。身分も何も関係ない。愛以外、私たちを縛るものはない世界。

 私はユベールと幸せになります。だからもう、心配しないでください、ヴィクトル様。これでようやく、貴方を忘れることができます。ユベールの望むままに。