「エルランジュ女史の尻拭い……いや、世話係と言っても過言ではない。何せ、理事をしているものの、ほとんど本部にはいないのだ。お陰で仕事が滞っていて敵わん」
「あら、リゼットが落ち着くまでは、ここにいるわよ」
「そういう問題ではない。仕事をしろ、と言っているのだ。馬鹿者」

 どちらが先生なのか分からないほど、アルベールさんは遠慮がない。机を叩いてまで怒りをぶちまけている。けれどサビーナ先生は、相変わらずどこ行く風だった。

「だからすまないが、当分の間はエルランジュ女史の執務室で働いてもらう。落ち着いたら、適切な部署に回すよう手配をするから、我慢してくれ」
「はい。何と言いますか、ありがとうございます。色々と気を遣っていただいて」
「いや、補佐をしてくれる者を養子に迎えるように薦めていた身でね。だから困ったことがあれば、遠慮せずに頼ってくれ。今、君に出て行かれては困ってしまうんだ」
「わ、分かりました。一生懸命、務めさせていただきます」

 アルベールさんの言葉とニュアンスで、いかにサビーナ先生が迷惑をかけているのかを、思い知らされた気分だった。