「細かい話は、一先ず後にしましょう。今から中に入って荷物の搬入をしなければならないんだから。お喋りしている暇はないわよ」
「そうでした。サビーナさんはともかく、僕たちの寝床を確保しないと」
「ユベール、言い方!」
「え? そんなに間違っていないと思うけど」

 さっきの話の後だけに、別の意味に聞こえてならなかった。だからなのか、ユベールが意味ありげに私を見る。

「こらこら、お喋りをしている暇はないって言わなかったかしら?」

 もう一度、サビーナ先生は私たちを(たしな)める。それもそのはず、現在の時間は正午を下回っているのだ。

 転移魔法陣を利用して、ユベールの家からここ、アコルセファムの家に家具を移動させても、半日で終わるかどうか。下手したら、夜までかかってしまうかもしれない。
 いや、今日中に終わるかどうかも怪しいほどだった。それをサビーナ先生は危惧していたのだ。

 何せ私たちは、ヴィクトル様のお墓を経由してアコルセファムに到着した身。以前の街を発ってから、すでに二週間は経過していた。

 特に言われたわけではないが、外観が焼けた家を、いつまでも放置しておくわけにはいかないのが理由だった。
 治安の面でもそうだが、ラシンナ商会からしてみれば、風評被害を防ぐために、いち早く取り壊したいと思っているに違いない。

 私たちは早速、家の中に入り、引っ越しの準備に取り掛かった。