「だから、ヴィクトル様の下した決断は、間違っていないと思います。現に私はヴィクトル様を恨んでいません。ユベールに会わせてくれて、ありがとうございます」

 ユベールをこの世に誕生させてくれて。

「この時代に私を連れて来てくれて。本当に感謝しています。それなのに私は、ヴィクトル様のお気持ちに、想いに気づけず、身勝手な判断をしました」

 意に反して、自ら命を絶とうと。

「そんな私を人形になっても守ってくださったこと。大事にしてくれたことを思うと、本当に私はなんてことをしたのだと、申し訳なさでいっぱいになりました」

 私は胸に手を当てて、ギュっと掴んだ。

「こんな私を愛してくれてありがとうございます。私もまた、愛していました。けれど今は……」

 この胸に抱いているのは、別の人。もう、ヴィクトル様じゃない。だから……。

「ごめんなさい」

 頭を下げて謝罪した。
 せめて今の私を見て、ヴィクトル様の望む形だったら、どれだけいいだろうか。けれどそれを確かめる術を、持ち合わせていないのが残念だった。

 人形になる前にいただいた、最後の手紙には何て書いてあっただろう。

『リゼットには生きていてほしい。どんな形でも……』

 そうだ。こんな文面だった。少しはヴィクトル様の望みを叶えられただろうか。