「お久しぶりです、ヴィクトル様」

 私は雪を被った灰色の墓石に話しかけた。その雪を払うことはせずに、一定の距離を置いて。ゆっくりと、静かに言葉を続けた。

「あれからおよそ百年経ってしまいました。けれどどんな形であれ、再びお会いできて……」

 嬉しいです、と言っていいものか悩んでしまった。

 私を探すように遺言を残したヴィクトル様。それにより、さらにバラバラになってしまった家族。私がその言葉を発するのは烏滸がましいと思ったのだ。けれど……。

「感謝しています」

 この言葉だけは伝えたかった。

「お陰でユベールに、ヴィクトル様のお孫様に会えました」

 それがどれだけ幸運だっただろうか。

 ユベールに見つけてもらうまで、私は見世物小屋にいたと聞く。
 具体的なことは教えてもらえなかったけれど、けしていい環境ではなかったのだろう。ユベールが口を噤むくらいだから。