「あっ、ごめん。つい……」
「大丈夫。私はここにお別れをしに来たのであって、感傷に更けるつもりはないの。だから、私一人で()()()()
「っ! お祖父様の後を追わない?」
「ユベールがいるのに、どうして追うの?」
「だって……」

 私が一度、死を願ったのを、サビーナ先生から聞いたのかな。ユベールの手が震えている。

「約束したじゃない。一人にしないって」
「……僕を」
「うん。ユベールを一人にしない。だから、ここで見守っていて。きちんとヴィクトル様に別れを告げる、私の姿を」

 すると、ユベールが私を抱き締めた。

「少しでも変なことをしたら、邪魔しに行くからね」
「うん。その時はお願いね」

 それでユベールが安心できるのなら、私を止めに来て。
 私がヴィクトル様のところに逝かないように。連れて逝かれないように、手綱をしっかり持っていてね、ユベール。