ザク、ザク。

 澄んだ青空の下、私は雪をかみしめながら歩いて行く。吐く息も白い。
 コートにマフラー、手袋をしているのにもかかわらず、否応なしに体を冷やしてくる、この冷気。雪が降っていないのが、せめてもの救いだった。

 そう、私は北の、それも雪が降る土地にやってきていた。寒々とした、この寂れた場所にお一人で眠っている、ヴィクトル様の元に。

「リゼット、大丈夫?」

 前を歩くユベールが、心配そうに振り向く。ここに来る道中、何度も聞いたセリフだった。今は雪の上を歩いているから、心情よりも体調を気にしてくれているのが分かる。

 何処に行っても、私の世話を焼きたがるんだから。

「うん。大丈夫。サビーナ先生はどうですか?」
「ありがとう、リゼット。私も大丈夫よ」

 後ろにいるサビーナ先生に向かって声をかけた。
 すると、少し疲れた姿と共に、張りのない声が返って来る。いつも転移魔法陣で移動しているから、こういう旅は慣れないのかもしれなかった。