後々聞くと、サビーナ先生は色々な街を旅するのが好きなのだと語ってくれた。魔術の話とは関係のない話だったが、私はそれを聞くのが好きだった。
 まさか、永久の時を生きる魔女だから、点々としていたなんて、その時は思いもよらなかったけれど。

 それでも私にとっては唯一、楽しい授業だった。

 だから正直に言うと、魔術師協会の本部で働くこと自体は構わない。同年代の人たちがいる、という話も魅力的だったし、何よりサビーナ先生と一緒なら大丈夫な気がしたのだ。

 恩返しがしたい。ユベールに出会えたこと。新たな道標を作ってくれたこと。その全てに。だから……。

「この話、是非、引き受けさせてください。ようやく得意な魔法が分かって、一からその道を学びたいんです。勿論、サビーナ先生の補佐も頑張ります」

 私は立ち上がって、サビーナ先生の前で頭を下げた。

「ありがとう、リゼット。引き受けてくれて。これで多少、私の肩の荷が下りたわ」
「そんなっ。養女にしていただいたばかりか、ここまでされて感謝しかないのに」
「でも、本来なら今の私のポジションはリゼットのものだったのよ」
「えっ」

 ポジションって、魔女のことではないとすると、魔術師協会の理事!?