「な、何を言っているんだ。私はそんなつもりで告げたわけではない」
「分かっております。私が役立たずだから、もうここには置いておけない、ということを。そのためには、婚約を破棄する必要があることも」

 ヴィクトル様が慌てるのも無理はなかった。私がマニフィカ公爵家にやってきたのは、五歳の時。
 現在、二十歳になられたヴィクトル様は、十歳だったから、もう十年も前のことだ。

 だから婚約者というより、幼なじみに近い関係だった。

「だったら何故、そんな極端な考えになるんだ。公爵邸を出れば済むことだろう」
「いいえ。思い出してください。私が公爵邸に来た理由を」
「生まれつき魔力量が多かったから、だろう」

 そう、バルテ伯爵家の長女として生まれた私が、マニフィカ公爵であるヴィクトル様の婚約者になれたのは、まさにそれだった。