「確かに、リゼットには酷なことを言っているかもしれないけれど。魔術師協会の中でも、私は魔女だということを秘密にしているの。でも、協会の中には何人もの魔女が所属している。交代しながら、常にね」
「あぁ、そうか。協力者が必要なんですね」
「そうよ、ユベールくん。当たり。基本、魔術師協会の本部に働く者たちは、推薦状を持ってやって来ているから、リゼットと同年代の子たちもいるわ。結局、魔力量に左右されてしまうから、年齢は関係ないのよ。とはいえ、長くい過ぎるのも怪しまれる。私はもう、あまり年を取らないから、余計にね」

 そう言ってサビーナ先生は苦笑した。現在使っている“サビーナ・エルランジュ”の名も、ギリギリなのだとか。
 だから、私が魔術師協会である程度の地位になれたら引退をして、別の魔女と交代したいのだそうだ。そうして魔女たちは、常に魔術師協会にいるという。
 常に新しい技術と情勢を把握したいがために。

「つまり、サビーナ先生のリミットが近づいているから、私が必要なんですね」
「……えぇ。またリゼットを利用するみたいで、悪いんだけど」
「いえ、お陰で腑に落ちました。どうしてサビーナ先生が私を養女にしたのか、疑問だったんです」

 いくら私を人形にしたからと言っても、その罪悪感でここまでしてくれるだろうか。
 この時代で孤児となってしまった私にとって、サビーナ先生がしてくれたことは、幸運以外の何物でもない。

 常に私を温かく見守ってくれていた人が、母親になってくれたのだから。