さすがに黙っていられなくなり、私は声を上げた。これ以上続けば、今度は何を言い出すのか、分かったものではないからだ。

「その、提案というのを先に教えていただけませんか。……早く聞きたいです」
「あらあら、恥ずかしがることはないのに」
「そういう問題ではありません」

 私の精神が持たないのだ。
 それを察してもらえたのか分からないが、サビーナ先生は「残念ねぇ」とクスクス笑いながら本題に入ってくれた。

「さて、まずは転移魔法陣について話したいところだけど、リゼットの言う通り、それは後回しにして、先に重要な話からしましょうか」
「提案と仰られたことですよね。それは何ですか?」
「貴方たちの居住場所よ。折角だから魔術師協会の本部がある、アコルセファムに来ない? そこなら、住む場所から仕事のことまで、色々と世話ができるし、何よりも融通が利くから」
「……確かに、魔術師協会の理事を務めるサビーナさんの後ろ盾があれば、何かと融通が利いていいと思います。けれど僕は……」

 魔力がないから難しい、と私もユベールの言葉に内心、頷いた。
 アコルセファムがどんな街なのかは知らないけれど、魔術師協会の本部があるくらいだ。魔法が中心の街だったら、私も賛成できない。
 下手をしたら、サビーナ先生の顔に泥を塗ってしまうことになるからだ。