お裁縫も苦手だったし。唯一、熱心にやっていた魔法だって、得意とは言い難い。でも、私に出来ることと言ったら、魔法しかないから。
 それを実現させるには、サビーナ先生に助力を仰ぐ必要がある。

「確かに、この街では難しいかもね。シビルがあんなことになっても、ラシンナ商会の力は強い。僕も続けられるか難しいと思っていたんだ」
「サビーナ先生にお願いして、別の居住場所を探す?」
「……うん。残念なことに、僕たちは未成年だから、家を借りられるわけじゃない。旅は可能だけど、大人よりも危険を伴う」

 そうだった。ユベールのご両親は事故で亡くなったんだった。仕事で隣町へ行く道中に。

「私が転移魔法陣を使えるようになればいいんだけど……」
「あら、リゼットなら簡単に使えるわよ」
「え?」

 振り向くと、扉の前にサビーナ先生が立っていた。こんな光景が、前にもあったような気がするのは、気のせいだろうか。

 いやいや、それよりも未だに私たちはベッドにいる。寝間着姿のままで。この羞恥を、どう表現していいものだろうか。
 とりあえず、ベッドから降りることしかできなかった。