「それに約束だってしたじゃない。どうしてそんな考えになるの?」
「リゼットが好きだからだよ。過去に、お祖父様に縛られてほしくない」
「だから、ユベールの傍にいない方がいい、というの?」

 確かにユベールはヴィクトル様に似ている。でも今は、ユベールだから傍にいたい。
 居心地のいい場所に。私を必要だと言ってくれる場所に、私はいたい。

「違うよ。矛盾しているのは分かっているんだ。それでもリゼットと一緒にいたい。だから引き留めたくて……想いを告げた。僕を置いていってほしくなくて」
「それは私のセリフよ。過去に縛られてほしくないのなら、ヴィクトル様みたいに私を捨てないで。私を好きだと思うのなら、ヴィクトル様と同じことをしないで」

 私の意思を無視して、私の為だと言って、意に沿わないことを、ユベールもするの?

「しないよ、したくないよ! 僕はお祖父様じゃないんだから。たとえリゼットがサビーナさんのところに行っても、ついて行くから」
「……そうしてくれると嬉しいな」
「いいの?」
「うん。人間に戻れたから、私もユベールみたいに働きたい。でも、この街だと難しいって思ったの。ユベールみたいに、何かできるわけじゃないから」