「あるべき形に戻すだけよ」
「どういう意味ですか?」
「魔女は誰かの人生に、長く介入してはいけないの。永久の時を生きる魔女にとっては。でも今回の件は、私が招いたことでもあるからね。元に戻すために、特別にしているだけなのよ」

 そうだった。時々、忘れてしまうけれど、サビーナさんは魔女だった。
 だからさっき、シビルの火傷をリゼットに治させたんだ。何で先に治してやらないのか、不思議に思っていたけど。シビルの性格が原因ではなかったのか。

「さぁ、早くリゼットをベッドに運んで頂戴。結構、この体勢も辛いんだから」
「あっ、そうですね。失礼します」

 僕はサビーナさんからリゼットを引き離し、横抱きにする。人形では味わえない重みと温もり。そして、仄かに漂う匂い。

 このまま椅子に座ってしまいたかったけれど、それではリゼットが安らかに眠れない。渋々、その椅子を素通りして、ベッドに横たわらせた。
 途端、ガチャっとドアの音がして振り向く。すると、そこにはもうサビーナさんの姿はなかった。