それからどのくらい経っただろうか。リゼットは泣き疲れて眠ってしまった。サビーナさんの腕の中で。

 羨ましくない、と言えば噓になる。
 だって、その感情を引き出したのは、僕じゃないから。リゼットの一番欲しい言葉を与えられることができるのだって、僕にはできないことだから。

 いつだってそれは、サビーナさんであり、僕を通して見ているお祖父様の影。
 どんなに頑張っても、埋めようのない時間がそこには存在する。リゼットと過ごした時間は、誰よりも短いからこそ、堪らなく悔しかった。この覆すことのできない事実に。

「ユベールくん」

 それを見透かされたのか、サビーナさんが僕を呼ぶ。そっと近づくと、涙で頬を濡らしたリゼットの顔が見えた。

 思う存分、溜め込んでいた感情を吐き出して、スッキリした表情のリゼット。初めて見た時も、人間に戻った時も、今のような眠った姿だった。

 僕が一番、好きな顔。