「リゼットは可愛いな」
ある日、ヴィクトル様と遊んでいた時、唐突に言われた言葉だった。
確かその時は、口うるさいメイド長に、細やかな嫌がらせをしようと、ヴィクトル様は罠を仕掛けている最中のことだった。
「えー、そんなことをしたらダメですよ。怒られてしまいます」
「そういうリゼットだって、顔が笑っているぞ。本当はもっとやれ、と思っているんじゃないか」
「っ! そ、そこまでは……」
思っていない、とはさすがに言えなかった。メイド長は怖い人だったから。
モジモジと下を向くと、突然ヴィクトル様が慌て出した。どうやら私が気落ちしたと思っているらしい。
それがさらにおかしくて、私は笑った。
「良かった。笑ってくれて。リゼットは笑顔が一番いいよ。可愛いから」
「っ! あ、ありがとうございます」
「ふふふっ。赤くなって、益々リゼットが可愛く見えるよ」
すでに婚約を済ませていたからか、これを機にヴィクトル様はよく、私にそう言ってくれた。それが嬉しくて、たくさん言われたくて。この時が一番、笑っていたような気がする。
また、どこか兄のように思っていたヴィクトル様を意識し始めたのも、この時期からだった。
ずっと兄のように思っていたら、ヴィクトル様に好きな人ができたと聞いた時は、傷つかなかったのかな。贈り物も、素直に受け取れていたのかな。
そう思うと、この気持ちさえ後悔に変わっていくように感じた。
ある日、ヴィクトル様と遊んでいた時、唐突に言われた言葉だった。
確かその時は、口うるさいメイド長に、細やかな嫌がらせをしようと、ヴィクトル様は罠を仕掛けている最中のことだった。
「えー、そんなことをしたらダメですよ。怒られてしまいます」
「そういうリゼットだって、顔が笑っているぞ。本当はもっとやれ、と思っているんじゃないか」
「っ! そ、そこまでは……」
思っていない、とはさすがに言えなかった。メイド長は怖い人だったから。
モジモジと下を向くと、突然ヴィクトル様が慌て出した。どうやら私が気落ちしたと思っているらしい。
それがさらにおかしくて、私は笑った。
「良かった。笑ってくれて。リゼットは笑顔が一番いいよ。可愛いから」
「っ! あ、ありがとうございます」
「ふふふっ。赤くなって、益々リゼットが可愛く見えるよ」
すでに婚約を済ませていたからか、これを機にヴィクトル様はよく、私にそう言ってくれた。それが嬉しくて、たくさん言われたくて。この時が一番、笑っていたような気がする。
また、どこか兄のように思っていたヴィクトル様を意識し始めたのも、この時期からだった。
ずっと兄のように思っていたら、ヴィクトル様に好きな人ができたと聞いた時は、傷つかなかったのかな。贈り物も、素直に受け取れていたのかな。
そう思うと、この気持ちさえ後悔に変わっていくように感じた。