「今までは、私の不安が原因だったんですね」
「それもあるけれど、得意不得意の違いね。攻撃魔法が苦手だったのも、リゼットは優しいからじゃないかしら。治癒魔法が得意なのも、そう」

 けれど当時の私に求められていた魔法は攻撃魔法だ。竜を退治できる強力な広域魔法。

 できないと思い続けていたけれど、そうじゃなかった。ただ苦手な魔法を克服すれば良かったんだ。今になって、それに気づくなんて……!

「サビーナさん。その話、長くなりそうですか?」

 頭が下りかけてきた瞬間、ユベールが私の肩に触れた。

「いいえ。でも、別の件は長くなりそうだけど」
「でしたら、部屋に戻りませんか?」
「えっ……」

 シビルを放っておいて?

「大丈夫。リゼットが治癒魔法を施す前に、ご主人と話はつけてあるから。数時間後には憲兵が来ると思うわ」
「そうですか」
「だから今は親子水入らずにしてあげましょう。しばらくは一緒にいられなくなるのだから」
「はい」

 私の返事を聞くと、ユベールが手を差し伸べてきた。

 不可抗力とはいえ、私とユベールは共にいられない未来があったのに、それからするとシビルの取った行動は哀れでしかない。
 けれど、今のユベールのように手を差し伸べてくれる人間が現れることを切に願った。