そう啖呵(たんか)を切ったのはいいものの、一抹の不安が脳裏を過る。だって、私は落ちこぼれ魔術師。

 優秀であれば、ヴィクトル様に婚約破棄を言い渡されることも、人形にされることもなかったのだ。そんな私が、無事にシビルの火傷を治すことができるのだろうか。

 ううん。できるのか、じゃなくて、やるのよ! やらなければ、私も彼女も前には進めない。

「大丈夫よ、リゼット。自信を持って」
「はい、サビーナ先生」
「リラックス、リラックス。そうだわ。授業の時のことを思い出して。後半はほとんど失敗しなかったでしょう」
「っ! そうでした」

 でもあの頃はもう、私に合った授業をサビーナ先生がしてくれたから大丈夫だったけど、今は……。

 ダメダメ。ネガティブになったら、また失敗しちゃう。今は成功したイメージを頭に入れなくちゃ。ただれた皮膚が綺麗になるイメージ。シビルが喜ぶイメージ。

 そうすると、シビルの両親も、サビーナ先生も、ユベールだって笑顔になる。うん。大丈夫。皆、幸せになるイメージをすれば、できる!

 私は目を閉じて、念じるように唱えた。

「キュアイルネス」