「先ほどは、そこにいる旦那様にだけ言ったので、改めて自己紹介させていただきます。私はサビーナ・エルランジュ。魔術師協会の理事を務めております。そして、ここにいるリゼットは、私の弟子なのですが、この度、養女として迎えました。よって、リゼットに対する侮辱は、私にしたのも同然、と受け取ってもよろしいですね」

 え? え? え? 魔術師協会の理事ってどういうこと?

 サビーナ先生は魔女だけど、魔術師とは違うって言っていませんでした? それなのに、数多の魔術師たちが所属する魔術師協会の、それも理事だなんて……!

 そもそも魔術師協会とは、その名の通り魔術師たちの団体で、彼らのサポートが主な仕事だった。
 仕事の斡旋(あっせん)から、研究場所や費用の提供。それから魔術師たちの保護に至るまでするのが魔術師協会だった。

 竜の大移動によって、毎年五歳になった子どもたちが能力の測定を行うが、受ける子どもたちは千差万別。その全てを完璧に仕分けることはできないのだ。
 私のように魔力量が多ければ、すぐに魔術師になるよう促される。が、少ない者は測定に引っかからず、別の職種へ。
 けれど後に、魔力量が増大したために、犯罪に手を染める者、巻き込まれる者が出て来てしまうのだ。
 そのため魔術師協会に所属する魔術師たちは、劣悪な環境にいる魔術師たちを見つけては保護を繰り返していた。
 同じ魔術師として、本来、享受できるものを享受できないこと。また、世間での魔術師の在り方や認知度を下げないための行動なのだと、サビーナ先生から聞いた。