「あら、自分が見られなかったから、その(ひが)み?」
「違います!」
「サビーナ先生……」
「ごめんなさい。そうよね。一番リゼットが気になるところを茶化しちゃって。だからこそ、安心して。火事の目撃者は多いけれど、炎の勢いが強過ぎて、リゼットの姿を見た人はいないの」
「本当ですか?」

 顔をあげると、優しい眼差しのサビーナ先生と目が合った。

「えぇ。しかも炎が自然と鎮火した、という目撃情報もあったわ。恐らく、リゼットの魔力と共鳴していた魔石が同じ赤い色をしていたから、見分けがつかなかったんでしょう。ともあれ、鎮火してすぐに二人を回収したから、誰にも姿を見られていないはずよ」
「えっ、でも、それだと人目につきませんか? 火事は目撃されているわけですから。私とユベールを見た人がいないなんて、おかしいです」

 さっきは安堵したせいで見落としてしまったけれど、色々と矛盾があった。けれどサビーナ先生はビクともしない。