「あら、楽しそうね。何かあったの?」

 部屋のノックが聞こえないくらい笑っていたのか、サビーナ先生が部屋に入ってきた。私はベッドから降りて駆け寄ろうとしたら、ユベールに止められてしまう。

「そう思うのなら、もう少し配慮をしてもらえると助かるんですが」
「私もそうしたいのは山々なんだけど、先方を待たせているのよ。あと、リゼットが目を覚ましたのなら、すぐに知らせるように言わなかったかしら」
「っ! ユベール!」

 何でそんな大事なことを言わないの!?

「命の恩人と語らう時間くらい、いいじゃないですか」
「う~ん。それもそうね。ユベールくんは今回、一番の被害者でもあるわけだから」
「さ、サビーナ先生?」
「でも、ご褒美はあったでしょう?」

 何の話? ご褒美って?

 けれどサビーナ先生は、すぐにその詳細を話してはくれなかった。どこか、ユベールの反応を楽しんでいるような、そんな気がしたのだ。
 けれど当の本人は、複雑な顔をしているだけ。何が楽しいのか分からなかった。