「なんとなくそうじゃないかなって思っていたわ。ユベールのことが好きそうに見えたし」
「僕は違うよ! 僕は――……」
「大丈夫! 迷惑に思っているのは感じたから。だから、あんな惨事になったのよね」

 ユベールが拒絶していなかったら、起こることのない惨事。拒絶には拒絶を。私もした行為だから分かる。

 あんな過激ではないけれど……。いや、殺してください、とお願いした私も過激だったかな?

「……僕も悪い、とは分かっているんだ。最初から拒否していれば良かったんだけど、シビルのお陰で今の仕事にありつけたから。機嫌を悪くさせてご主人や女将さんに迷惑をかけたくなくて……」
「うん。でも、シビルさんの気持ちもよく分かるの。少しの希望でも(すが)りたくなる気持ちが。私もそうだったから」
「お祖父様に?」
「……心変わりされた、という噂を聞いても、プレゼントを受け取る度に期待してしまうの。それっきりになったとしても」

 簡単に気持ちを切り替えることはできなかった。だって、好きだったから。ヴィクトル様のことが。だから、ユベールを責めるつもりはない。