「黙っていてごめん」
「ううん。何か事情があったと思うから気にしていないわ」

 多分、サビーナ先生は私に余計なプレッシャーをかけないようにしてくれたのだろう。
 ユベールに至っては……私のせいでサビーナ先生を敵視して言わなかったのが、手に取るように分かった。

「どちらかというと、松明を持っていた……えっと赤毛の人の方が気になるわ。どうなったのか、とか。無事なのか、とか。その……ユベールの……知り合い、なんでしょう?」

 確かシビルって名前の、ユベールのことが好きな少女。拒絶されて、私とは正反対の行動を取った恐ろしい人。
 あの時、二人の会話が聞こえなかったから、余計に気になっていたのだ。

「……うん。ブディックに行った日のことを憶えているかな。帰りにラシンナ商会に寄った時のこと」
「明確にどこ、とは言っていなかったけど、ユベールが気乗りしていないのは伝わってきたわ」
「いつもどうでもいい注文から、ちょっと困った注文までしてくるお客さんでね。ブリットさんを経由して注文を受けているんだけど、頻度も多くて困っていたんだ。その相手がラシンナ商会のお嬢さん、シビル・ラシンナ。リゼットが見た赤毛の人だよ」

 やっぱり。