「どこにいるの?」

 炎の中を歩きながら、私はユベールを探した。ユベールが私を探してくれたように、今度は私が。

 その歩みはゆっくりだというのに、いつもより早く感じる。目の高さも、いつもと違う感じがした。風魔法で体を浮かせていないのに。

 けれどそんな疑問は、すぐに搔き消されてしまう。体中、炎に包まれたユベールを発見したからだ。

「ゆ、ユベール……」

 立っているのがやっとな姿に涙が止まらない。私の方に伸びた手を、両手で包み込んだ。その手が炎でただれていて痛々しい。
 早く治さなければ、手を遅れになりそうなほど、ユベールの体もまた酷かった。

 私は祈るように、その手に顔を近づける。

「お願い、ユベールを助けて」

 もう失いたくないの!

「私だって一人になりたくない!」

 そう叫んだ瞬間、私を包み込んでいた赤い光が大きくなり、辺り一面に広がり始めた。左右は勿論のこと、上にも向かって、すべてを包み込んでいく。

 それは禍々しく燃え盛っていた炎も例外ではなかった。
 私の赤い光が、炎をも飲み込むように掻き消していく。ユベールの体に付いていた炎も、ただれた肌も。焦げた銀髪さえも、私の望み通りに治っていた。

 そっとユベールの頬に触れる。

「良かった」

 温かい。さらに抱き締めると、心臓の音が聞こえた。

 トクン、トクン。

 規則正しい音と安堵感から、私はユベールを抱き締めたまま、草の上に倒れ込んだ。いつの間にか、人間の姿に戻っていることにも気がつかずに。