「アクアスプラッシュ! アクアスプラッシュ!」

 バサッ!

「はぁはぁはぁはぁ」

 風魔法で体を浮かせながら、水魔法を使っていたからだろう。体が草の上に落ちた。

 倒れている場合でも、休んでいる暇もないのに。早く火を消さないとユベールが……ユベールが……死んじゃう!

 私は立ち上がって、燃え盛る炎を見上げた。

「助けなきゃ……」

 力が、力があるんじゃないの!? だからヴィクトル様のところに行ったんじゃなかったの!

 この力で竜を倒すって。人々を守るために。

 それなのに失うの? また自分のせいで、たくさんの人を悲しませて……傷つけて……。

 嫌、嫌だよ……。ユベール……。

『僕にはリゼットしかいないんだ……』

「私だって、私だってユベールしかいないのに……!」

 ギュッと胸元の魔石を握り締めた。途端、赤く光り出した。炎よりも赤い、鮮やかな色をした光が、強く辺りを照らし出す。

 その中を私は一歩、一歩、炎に向かって歩いて行った。力が溢れているからなのか、怖さを感じない。むしろ、行かなきゃならない衝動に駆られていた。

 そう、ユベールを助けるために。