そんな攻防が繰り広げられている中、松明は僕とシビルの間を行き来している。
 左右に揺れながら、火の粉が少しずつ僕とシビルの髪や服の上に落ちる。が、お互い気にしていられなかった。

 奪わなければ、何もかも奪われる。家だけでなく、リゼットにも向く可能性だって……!

「やめて!」

 しかしリゼットは僕の考えなどお構いなしに、声を上げ、そして……。

「ようやく姿を……って、何あれ……人形?」
「っ!」

 僕は咄嗟にシビルを壁に追い詰めた。リゼットの姿を隠すために。しかし、それが不味かった。

 シビルと僕の手の中にあった松明の炎が壁にかかってしまったのだ。
 その瞬間、勢いよく燃え上がる。壁から、それを背にしたシビル、さらに腕を握っていた僕にも。次々に引火していく炎。

「キャャャャャャャャャャャャーーー!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」

 熱い、痛い、熱い、痛い。

 一歩、一歩、後ろに下がると、背の高い草にも火が付く。すると、さらに燃え上り……。

 あ、ダメだ……リゼットにも……。たす……け……ない、と……!

 振り向き、声のした方へ歩いて行く。すでに視界が悪く、目を開けているのかすら分からない。それでも僕はリゼットに向けて手を伸ばした。

「ゆ、ユベール……」

 泣きそうリゼットの声を堺に、僕の意識は途絶えた……。