しかし悠長に、悲しみに暮れている暇はなかった。シビルは言い放った勢いと共に、松明を掲げる。

「そうよ、無くなっちゃえば。無くなっちゃえばいいのよ。そうすれば……!」
「望みが叶うんですか?」

 シビルの高笑いが響く中、遠くからリゼットの声が静かに聞こえた。掻き消えてもおかしくはないのに、はっきりと。それはシビルも同じようだった。

「誰! さっきはよくも邪魔をしてくれたわね。隠れていないで出て来なさいよ!」
「邪魔ってことは、やっぱり僕を殺す気だったんじゃないか!」

 折角、シビルの関心が、リゼットから僕に移ったのに。僕は逆にその隙をついて、シビルから松明を奪おうとした。

「違うって言ったでしょう! それよりもさっさと姿を現しなさいよ! 卑怯者!」
「今はこっちが大事だろう!」

 松明を掴んで引き寄せる。けれど奪われまいと、すぐにグンッと持っていかれた。
 僕より体が小さいのに、どこからそんな力が出てくるのか。油断していると、シビルに主導権を握られてしまいそうだった。