シビルはそう言うが、直した小物入れの他に、衣装ケースの飾り、ブローチ、髪留め。
 それから人形の服を作っていることを知られてからは、それも。あと、人形とお揃いの服も作らされた。サイズはブリットさんが知っていたから、それに合わせて……。

 一応、配慮してくれているのか、無理難題を押し付けられることはなかった。
 また、シビルの我が儘から請け負った仕事だっただけに、通常よりも報酬がよく、我慢できる範囲だった。選り好みできる立場でもなかったのもあって。

 けれど、それが何度も続けば、ご主人だっていい顔をしなくなるのは当然だった。僕がシビルに気のないことも知っていただけに、娘がカモにされている、と勘違いされてしまったのだ。
 今は、僕も迷惑していることを知っているからいいけど、あの時は本当に困った。

「そう言うけど、支払いはご主人がしているんだ。いつまでもタダというわけにはいかないからって。自分の父親にまで迷惑をかけるなよ」
「何? 今度は一丁前に説教? 自分に親がいないからって(ひが)まないでよ!」
「いないからこそ、大事にしろって言っているんだ」
「煩いわね! いつまでもいない存在に固執するなんて。だから燃やしてあげようとしたんじゃない。こんな家、ユベールに相応しくないし、無くなればウチに来るしかないでしょう?」
「っ!」

 シビルの目的に衝撃を受けた。
 僕の殺害じゃなくて、家の放火だって!? いや、両親との思い出の家を失うのは、僕の心を殺されるのと同じだった。僕の財産も全て……そうリゼットとの思い出さえも……!