「うん。そうだ。そうしよう。リゼットを止めるんだ」

 今ならまだ間に合う。急がないと。

 僕は玄関に向かって行った。途端、今度は見知った声が聞こえてきた。

「誰!」

 そう、シビルの声だ。何で?

「誰なの!」

 まさかリゼットに?

 瞬時に思いついたのは、リゼットの顔だった。まさかシビルに見つかったとか。
 考えただけでもゾッとした。ブリットさんでさえ、人形のリゼットを買い取りたいとか言ってきたほどだ。シビルも……!

 そしたら今度こそ、リゼットを取られてしまうかもしれない。シビルは()(まま)(おんな)だから、僕の言葉なんて聞かないだろうし。

 意識を逸らして、リゼットを助けるんだ。