「ユベール……」

 ふと、リゼットに呼ばれたような気がした。その寂しそうな声に、思わず体が反応する。けれど、今は……。

「八つ当たりしそうで……怖い……」

 そんな自分を想像しただけで、自己嫌悪に(おちい)った。
 お祖父様のせいで嫌な思いをして、裏切られて……。僕にまで同じ扱いを受けたら、リゼットはどうなるんだろうか。

 離れて行くよな。僕のことなんか嫌いになって。……お祖父様ほど一緒にいないから、簡単に。そう、サビーナさんのところへ。

 そうなったら僕はまた、一人になる。そうならない、手っ取り早い方法はある、けど……。僕は、弱者に寄り添えない人間とは、一緒になりたくなかった。

 今は僕が欲しくて、シビルは媚びているけど、手に入れればすぐに豹変するに決まっている。僕を孤児だと罵り、自分に服中させる。

 シビルの他にも、そうやって近づいてきた人間がいたからだ。それこそ、性別や年齢など関係ない人間たちが……。