意を決したものの、早速難題に行き当たる。そう、外に出る方法だ。
 風魔法で体を浮かせて、ドアノブを掴むことは出来る。風魔法を解除した後、重力魔法で足りない重みをかけて、ドアノブを下げれば開くだろう。

 しかしこれは玄関から出る方法。
 いくら魔法を使っても、人形の私では行動にムラが出てしまう。音が鳴るのは必須。すると、家の中にいるユベールが気づくし、外にいる相手にも勘付かれてしまう。
 よって、玄関は却下。

「……となると、別の窓からの方がいいかしら」

 何も窓は一つだけじゃない。私は風魔法で少しだけ体を浮かせると、室内を移動した。
 理由は簡単だ。エナメルシューズを履いているからだった。何せ足音がうるさい。さらに移動速度のことも考えると、これが適切だった。

 とはいえ、人と同じ目線の高さだと、外にいる相手に見えてしまうかもしれない。
 さっきは迂闊にも振り向いてしまったが、人形が動いている、なんて知られたらユベールの評判が下がってしまう。勿論、私の身も危ないけれど。

「私はこうして魔法が使えるから」

 ユベールが私をブディックに連れて行ってくれたのも、まさにそれが理由だった。お陰で自信を持てたのだ。