「ん? 何かしら」

 ふと、気配を感じたのだ。それも後ろから。私は何も考えずに振り向いてしまった。今の私は人形の姿をしているというのに。

 人間だった頃の記憶を鮮明に思い出してしまったせいだろうか。

「っ!」

 窓の外で何かが動いている。風の音がしないのに、背の高い草が揺れているのだ。
 仮にあったとしても、その奥にある草木に変化がなければおかしい。何せその揺れは、強風でなければ揺れないほど、大きな動きをしていたからだ。

「誰か……いるの?」

 咄嗟に、ユベールがいる作業台の方へと視線を向けた。伝えるべきだろうか。

 ううん。私は首を横に振った。

「今のユベールに負担をかけたくない」

 そう、私が下した決断は、一人で解決する方法だった。